最近の注目情報詳細2014年1月)

 

 

1.【岐路に立つE地方分権】熱意が失われていないか

2014年1月7日 高知新聞/社説)

 「中央集権的行政の在り方を問い直し、地方分権のより一層の推進を望む声は大きな流れになっている」

 1993年、衆参両院が全会一致で行った地方分権推進決議だ。2000年には国と地方を「上下・主従」から「対等・協力」の関係と位置付ける地方分権一括法も施行された。

 決議から20年が過ぎたが、十分な成果が上がったとは言い難い。

 昨年末、中央省庁の地方出先機関の改革方針が閣議決定された。国と地方の二重行政の解消などを目的に、48の事務や権限を地方自治体に移す。

 例えば厚生労働省のハローワークが持つ求人情報を自治体にも提供することで、身近な役所で就職支援が受けられるようにする。これにより一定の利便性アップは期待できよう。

 とはいえ地方側が満足できるだけの権限移譲でないことは明らかだ。

 農地を工場用地や住宅地などに転用する際の許可権限の移譲は先送りされた。自治体の要請は強いにもかかわらず、農林水産省は「農地面積が減りかねない」と拒んでいる。

 安易に地方に任せては国全体で取り組むべき政策が徹底しない―。そんな地方不信が相変わらず根強いことが分かる。

 消極的なのは国だけではない。分権に懸ける地方側の熱意も失われつつあるのではないか。

 出先機関改革では国直轄の道路・河川の管理権限も、国土交通省と合意したものから順に都道府県や政令指定都市に移されることになった。

 半面、移管されれば自治体の財政負担は重くなり、災害対応など管理責任も増す。それを嫌って国直轄の維持を望む自治体も少なくない。だが消極姿勢が過ぎると、分権を渋る中央省庁に格好の口実を与えてしまう。

 移管は出先機関の予算や人員もセットで行うよう求めるなど、国への働き掛けを強め続ける必要がある。

 

 停滞から脱却を

 

 前民主党政権は曲がりなりにも、分権改革を政策の「一丁目一番地」に位置付けていた。国が使い道を決めて配分する「ひも付き補助金」を、自治体の裁量で使える一括交付金にする取り組みなどは地方側から一定の評価も得ていた。ところが安倍政権は2013年度からこれを廃止、ひも付き補助金を復活させている。

 東日本大震災の復興財源に充てるため国が地方公務員の給与水準を引き下げるよう求めた問題では、地方側の理解を得ないまま給与支払いに必要な地方交付税を削減。これに全国知事会などが猛反発したのは記憶に新しい。

 国と地方が対等で協力し合う関係であるためには、十分な協議を通して意思疎通を図ることが大前提だ。そのプロセスに重きを置かず、財政を通じて地方をコントロールする手法は分権の理念に反する。

 その一方で都道府県を廃止し、全国を10程度の道や州に再編する道州制には前向きとされる。しかし、都道府県が連携する広域連合の実績もまだ少ない中、一足飛びに道州制と言われても国民の理解は進むまい。

 道州制を導入するにしても中央省庁の権限縮小や、国と道州との税源配分が重要テーマとなる。まずは出先機関の縮小・廃止など今ある課題を着実に解決していくことが大切だ。

 停滞している分権改革の流れを、いま一度加速させる年にしなければならない。

 

 

2.[地方分権改革] 推進に向け強い決意を

2014年1月11日 南日本新聞/社説)

 安倍政権が進める地方分権への動きが鈍い。道州制の導入論議は停滞し、地方が求める許可権限などの移譲も進んでいない。

 第2次安倍政権は2012年末の発足以来、デフレ脱却を目指して経済政策に力を注ぐ一方、国家安全保障会議(NSC)創設など安全保障政策を重視してきた。

 だが、政府は昨年3月、安倍晋三首相をトップとする地方分権改革推進本部を新設、国から地方への権限移譲に取り組むことを決めている。自立した地方づくりに向けて、国も地方も改革を進める強い意思を示すべきである。

 分権改革で最も注目すべきは、道州制の導入論議だろう。

 道州制は都道府県を廃止し、全国を10程度の道や州に再編する構想だ。現在の法案は有識者らの国民会議が区域割りや、税源配分などの制度を答申し、政府が法整備をする内容になっている。

 しかし、全国知事会は「国民会議に制度設計を丸投げしている」と批判、中央省庁の権限縮小などの明記を求めた。昨年は内容をめぐり自民党と調整したが、不調に終わっている。

 自民党は通常国会への提出を目指すが、知事会に加え、地域格差を拡大するとして全国町村会も反対している状況では、提出に地方側の同意を得るのは困難だ。知事会などの要望をよく聞き、地方の了解を得る努力が欠かせまい。

 地方分権改革は、1993年6月の分権推進に向けた衆参の国会決議で本格的にスタートした。決議から20年の節目を迎えた昨年、国の分権改革有識者会議は「地方の法的な自主自立性が高まるなど、地方分権の基盤はおおむね構築された」と20年を総括したが、この評価には疑問が残る。

 農地を工場用地などに転用する際の許可権限をめぐっては、知事会などが「国との手続きに時間がかかり、土地の有効利用の妨げになっている」と移譲を強く希望している。だが、農地面積が減りかねないとして農林水産省が反対して実現に至っていない。

 道州制導入など分権失速の背景には、導入を強く求めていた橋下徹大阪市長が共同代表を務める「日本維新の会」の勢いに衰えが目立ち、憲法改正などで維新の会の協力を得るために前向きだった自民党の姿勢が微妙に後退したという政治情勢の変化もある。

 だが、93年の「国民が等しくゆとりと豊かさを実感できる社会を実現するため中央集権的行政を問い直す」との国会決議は重い。国と地方の協議の場を一層活用し、実務的な話し合いを通じて成果を挙げる強い決意が求められる。

 

 

3.分権の再起動 地方主導で国道移譲を

2014年1月13日 毎日新聞/社説)

日本の人口が減少していく中で地方が経済、文化のけん引役となり、活力ある生活圏を維持していく。安倍政権の政策にこれまで、不足気味な要素であろう。

政府が力を注ぐ国家戦略特区構想も地方側には大都市圏中心の発想と受け取られがちだ。政権から地方に発せられるメッセージは国土強靱(きょうじん)化など公共事業に偏りがちである。

それだけに政府が国から地方への48項目の権限移譲を柱とする分権改革の基本方針を決定したことを歓迎したい。安倍晋三首相は次期国会の施政方針演説などで分権重視を鮮明にし、改革を仕切り直してほしい。

基本方針は一般国道で重要度の高い国の直轄国道について、ひとつの都道府県で起点、終点が完結するなどの場合、国と都道府県が協議で合意すれば原則として整備、管理を移譲できる措置を講じた。一部の1級河川についても都道府県に2級河川として移管できる道を開いた。

移譲には関係市町村との調整も必要なため、ハードルは決して低くない。だが、国道の多くの部分はすでに地方が管理し、同じ国道で区間ごとに国直轄と地方管理が分かれるような不都合も目立つ。河川も、地方側が水利権を望むケースがある。道路、河川の移譲は地方側の同意を前提とするだけに、都道府県が主導し進める気概をみせてほしい。

一方、これまで地方が管理している道路や河川について、逆に地方の要望を受けて国直轄とすることも可能とした。東日本大震災に伴う自治体負担を考慮すべき場合に限るなど、分権に逆行しないよう必要性は慎重に精査すべきだ。

都道府県から政令市への権限移譲にも踏み込んだ。市立小中学校の教員給与や学級編成に関する権限、都市計画のマスタープラン決定権はこれまで移譲が難航していた領域だ。

とはいえ、国が岩盤のように権限移譲を拒む分野は依然として多い。たとえば農地を他の用地に転用する許可権がそうだ。住民による自治を拡充するためにも都市計画など地域づくりに関する権限は地方に委ねる方向を明確にしてほしい。

民主党政権は国が地方行政をさまざまな基準で縛る「義務付け、枠付け」の見直しで成果を上げた。分権へ熱意が見えなかった安倍内閣だが、取り組むべき課題の多くは第1次内閣時代に発足し、活動を終えた地方分権改革推進委員会の勧告がベースだ。

自民党が推進を掲げる道州制構想の動向も今年の地方自治の課題となる。だが、国と地方の役割分担を整理する議論がまずは欠かせない。そのためにも、現内閣で放置している国の出先機関の地方への移譲も真剣に検討しなければならない。

 

 

4.地方分権 自立目指して改革を進めよ

2014年1月14日 宮崎日日新聞/社説)

 地方分権をめぐる安倍政権の動きは鈍い。だが、これからは自立した地方づくりが大切だ。国も地方も改革を進める強い意志を示すべきだが、経済基盤の弱い地域の切り捨てであってはならない。

 

■見えない道州制の姿■

 

 道州制は全国を10程度の道と州に再編する。自民党は導入の手続きを定めた道州制基本法の早期制定を図るとの立場だが、昨年の全国知事会との調整は不調に終わっている。

 国の権限はそのままで、都道府県が合併し無くなるだけの道州制では困ると考えた知事会が、中央省庁の権限縮小などの明記を求めたからだ。法案提出までに国と地方が合意するのは難しいだろう。

 自民党は通常国会への提出を目指すが、地域間格差を拡大するとして全国町村会も反対を決議。提出に地方の同意を得るのは至難の業だ。安倍晋三首相の関心も高いとは言えず、法案提出は先送りされる可能性が高い。

 宮崎日日新聞社が昨年実施した九州7県知事への道州制アンケートでは3人が「賛成」、3人が「どちらでもない」、1人が回答項目を選択しなかった。道州制九州モデルを策定するなど一体となって取り組んでいる九州地方知事会内でも、思い描く道州制の姿がそれぞれ異なっていることがうかがえる。

 「どちらでもない」と答えた本県の河野知事は「宮崎が廃れてしまうような道州制には賛成するわけにはいかない」と説明している。当然である。市町村合併で人口減少が進んだ地域が見られるように、道州制導入により本県が疲弊していくようでは困る。市町村合併を検証しながら道州制を考えていくことも大切だろう。

 

■自治体間連携強化を■

 

 地方分権改革に関しては「国が権限を手放さないから地方が自立できない」「地方に任せればうまくいく」などという声があった。これらを背景に取り組みは進んだが、地方の少子高齢化や人口流出は続き、経済の活性化も不十分なままだ。

 状況を改善するには、地方自治体が自らの判断で安定的、効率的に地域を経営できる環境づくりが重要だ。国の機能をさらに地方に移し、都道府県や政令指定都市などが自立的に行政を進められる能力を備えるべきだ。

 人口や財政の状況から全市町村が同じ能力は持てない。市民サービスのレベルを維持するため、市町村同士、市町村と都道府県との連携を強化する方策も重要だ。

 本県もこれまで国に依存してきた部分があったことは否めない。だが、今後は積極的に分権を国に働きかけていくことが大切だ。さらに県から市町村への権限移譲に向け、具体的に協議を進める必要もあろう。

 人口減が進む中、各自治体は責任を持って地域づくりを進めなくてはならない。そのためにも分権改革の推進は欠かせない。